犯罪収益移転防止法とは?概要や本人確認(eKYC)の要件について
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金融機関などの特定事業者には、口座開設など特定取引の際に本人確認手続きが義務付けられています。その根拠となる法律が「犯罪収益移転防止法」です。2018年の法改正では、オンライン上で本人確認を完結する手続き(eKYC)を認めました。
犯罪収益移転防止法でeKYCがどのように定められているのか、また概要や制定の背景などについて解説していきます。
目次[非表示]
- 1.オンライン本人確認を可能にした「犯罪収益移転防止法」
- 1.1.犯罪収益移転防止法(犯収法)とは?
- 1.2.「犯収法 特定事業者」とは
- 1.3.法改正の流れ
- 2.法改正のポイント
- 2.1.郵送のプロセスが不要に
- 2.2.本人の容貌確認などの要件が追加
- 3.eKYC(オンライン本人確認)が認められる
- 4.犯罪収益移転防止法制定の背景
- 5.犯罪収益移転防止法が定めるeKYCの要件
- 5.1.【6条1項1号ホ】本人確認書類の画像と本人容貌画像の送信
- 5.2.【6条1項1号ヘ】ICチップ情報と本人容貌画像の送信
- 5.3.【6条1項1号ト(1)】銀行など特定事業者への照会
- 5.4.【6条1項1号ワ】公的個人認証(電子証明)の送信
- 6.犯罪収益移転防止法に対応したeKYCなら「ネクスウェイ本人確認サービス」
- 7.まとめ
オンライン本人確認を可能にした「犯罪収益移転防止法」
銀行やクレジットカード会社などの特定事業者は、「犯罪収益移転防止法」によって申込者に対し本人確認を行わなければなりません。
本人確認には、「身元確認」と「当人認証」の2つが必要になります。非対面で確認を行う場合、身元確認に郵便でのやり取りを必要としたためにコストと時間が大きくかかり、インターネットが普及した現代においては金融業界のIT化を阻んでいました。
そんな中、2018年の法改正によってオンライン上で本人確認が完結することが可能になったのです。
犯罪収益移転防止法(犯収法)とは?
犯罪収益移転防止法とは、どんな法律なのでしょうか。犯罪収益移転防止法(犯収法)は、正式には「犯罪による収益の移転防止に関する法律」といいます。
マネーロンダリング(資金洗浄)及びテロへの資金供与を規制するための法律として、2007年に制定されました。内容としては、金融機関等の特定事業者が取引を行う際の本人確認、取引記録の保管、疑わしい取引の届出等が義務付けられています。
現在までで2回の法改正があり、悪質化していくマネーロンダリングやなりすましの手口に対して厳しく規制を行っています。
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「犯収法 特定事業者」とは
犯収法における特定事業者とは、金融機関をはじめとする以下の事業者になります。
- 金融機関
- ファイナンスリース会社
- クレジットカード会社
- 宅地建物取引業者
- 宝石・貴金属等取扱業者
- 郵便物受取サービス
- 電話受付代行
- 電話転送サービス
- 司法書士または司法書士法人
- 行政書士または行政書士法人
- 公認会計士または監査法人
- 税理士または税理士法人
- 弁護士又は弁護士法人
犯収法は、これらの特定事業者が行う業務の全てに関与するというわけではなく、事業者によって定められている特定業務、及び特定取引についてが対象になっています。
法改正の流れ
犯収法は2007年に制定されてから現在まで、2018年11月と2020年4月に2度法改正が行われました。ここでは、法改正の流れについて簡単に説明します。
2018年の改正では、オンライン上で本人確認が全て完了する手続き(eKYC)が認められました。オンラインで本人確認書類かICチップ情報のいずれかと本人の容貌画像をアップロードして送信すれば、この場合は転送不要郵便を送付する必要がなくなったのです。ただし安全性を確保するため、申込みには特定事業者が提供するソフトウェアを使用し、送信する画像は申込時に撮影されたものに限ります。
この改正によって、オンラインの申込みが完了するまでのスピードは向上し、顧客の利便性は大きく高まりました。
2020年の改正では、郵便を利用する本人確認がより厳格化しました。郵便を利用する本人確認の場合、提出する本人確認書類は1点だけでよかったものが2点必要という要件に変更されました。
また新たな確認要件として、ソフトウェアを用いて本人確認書類を送付することに加えて転送不要郵便を送付する方法も付け加えられました。
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法改正のポイント
2018年の法改正によって、eKYC(オンライン上で完結する本人確認手続き)が認められるようになりました。法改正のポイントは、次の2つです。
- 郵送のプロセスが不要の確認要件が認められた
- 本人の容貌確認などの要件が追加された
以下に、詳しく説明していきます。
郵送のプロセスが不要に
従来の手続きでは、顧客からの本人確認書類の送付とともに、事業者から書類に記載された住所へ転送不要郵便を送付することが必要でした。
しかし、2018年の法改正から以下の3要件については郵送のプロセスが不要になったのです。
- 本人確認書類の画像と本人の容貌写真の画像を送信
- ICチップ情報と本人の容貌写真画像を送信
- 申込者が利用している銀行等に本人確認情報を照会する、あるいは本人確認口座へ少額入金
郵送が不要になったことで、完全にオンライン上で手続きを完了させることが可能になりました。
このことにより、顧客がサービスを受けるまでの時間が短縮され、事業者にとっては申込者の離脱を減らして本人確認業務にかかるコストを減少させることができるようになっています。
本人の容貌確認などの要件が追加
一方で、オンライン上で本人確認を行うにあたって、本人の容貌確認などの要件が追加されました。
オンライン上で安全に本人確認を行うためには、生体的特徴の一致を確認する必要があるためです。また、申込みに必要書類が増え、本人確認書類の厚みなどを捉えた画像も必要になりました。
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eKYC(オンライン本人確認)が認められる
eKYCが認められたことは、日本におけるFintech(フィンテック)の発展に大きく貢献しました。フィンテックとは、Finance(金融)とTechnology(技術)を組み合わせた造語で、金融サービスと情報技術を結びつけた動きのことです。
顧客にとっては、用意する書類が少なく、手持ちのスマホで時間や場所を気にせず気軽に申込みできる、サービス開始までの待ち時間が少なくなるなどのメリットがあります。
一方事業者にとっても、本人確認がオンライン化することで今まで郵便や印刷にかかっていたコストを減らし、スムーズに申込みできることから申込時の離脱者を減らし、新たな顧客獲得を望むことができるでしょう。
本人の容貌画像と本人確認書類の2点で完結
転送不要郵便が不要になり、オンライン上で本人の容貌画像と本人確認書類の2点のみで本人確認が可能になったことは、画期的なことでした。
本人の容貌画像と本人確認書類は申込時に撮影されたものに限り、写真の加工を防ぐために事業者が提供するソフトウェアを使用する必要があります。この2点の送信を受けて、事業者側で本人の画像が一致するか、申込み内容に矛盾はないか等目視確認を行った後に結果連絡になります。
本人確認にかかる時間が短縮されたことで、銀行口座を即日開設することも可能になりました。
オンラインで銀行口座の開設やカード申し込みが可能に
eKYCによって、これまで対面での対応が主だった銀行口座の開設や、郵送申込みが多かったカード申込みもオンラインで行えるようになりました。本人確認がオンラインで全て完了するため、申込書の記入や捺印が不要になり顧客の申込みへのハードルはかなり下がったと言えます。
銀行やクレジットカード、証券などの投資サービスやクラウドファンディングサービスなどの口座開設・会員登録などにもeKYCは利用されています。新型コロナウイルスの流行による非対面化の流れもあり、今後ますますeKYCは普及していくことでしょう。
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犯罪収益移転防止法制定の背景
マネーロンダリング及びテロへの資金供与への規制には、FATF(金融活動作業部会)が定めた「40の勧告」という国際的な基準があります。この基準に則って、日本では犯収法の前身にあたる「組織的犯罪処罰法」(2000年施行)「金融機関等確認法」(2003年施行)が制定されました。
しかしマネーロンダリングの手口が複雑かつ巧妙になってきたことを受け、「犯収法」として一本化したという背景があります。制定以降何度か改正を行い、特定事業者への規制を強めるとともに、ITの発展にともなって本人確認をオンラインで手続きできるようにも対応しています。
マネーロンダリング手口の複雑化・巧妙化
マネーロンダリング(資金洗浄)とは、反社会的組織やテロ組織などの犯罪集団が、麻薬や脱税といった非合法で入手した資金の出所をわからなくすることをいいます。
例えば、強盗や麻薬売買、脱税などの犯罪で不当に手に入れた資金(汚れたお金)を使って宝石や美術品を買い(洗浄)、時間を置いた後売却して再びお金を得る(きれいなお金)という行為がマネーロンダリングに当たります。
最近では、不動産の売買や複数の架空の口座に送金を繰り返して出所をたどれなくするなどの複雑かつ巧妙な手口が増えており、捜査・検挙が難しくなってきています。
「ハイリスク取引」という類型の追加
マネーロンダリングの手口が複雑化しているという背景を受けて、犯収法では不正の可能性が高い取引を「ハイリスク取引」として取り扱うように義務付けました。
具体的には、以下に該当する取引のことを指します。
- なりすましの疑いがある、または本人特定事項を偽っていた疑いのある顧客との取引
- 特定国(イラン、北朝鮮など)に居住、あるいは所在する顧客または特定国に居住、あるいは所在する者へ財産の移転を伴う取引
- 外国の元首など重要な公的地位にある者との取引
ハイリスク取引では、通常の特定取引よりも取引の目的や資産や収入の状況など確認事項が多く、さらに厳格に本人特定事項を確認することが求められます。
なりすましを防ぐセキュリティシステムが進化
eKYCにおいても、なりすましを防ぐためのセキュリティシステムが開発されています。
例えば、スマホやパソコンのビデオチャットを用いてまばたきや目線を検知して生体反応を確認するライブネス判定システムや、ICチップ読み取りアプリなど日々新たな手口が出てくるなりすましに対応しています。
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犯罪収益移転防止法が定めるeKYCの要件
犯罪収益移転防止法が定めるeKYCの要件は、主に次の4つになります。
- 本人確認書類の画像と本人容貌画像の送信
- ICチップ情報と本人容貌画像の送信
- 銀行など特定事業者への照会
- 公的個人認証(電子証明)の送信
これらはそれぞれ6条1項1号ホ〜ト・ワに定められています。それでは具体的に、どのように確認するのか解説していきましょう。
【6条1項1号ホ】本人確認書類の画像と本人容貌画像の送信
出典元:平成30年改正犯罪収益移転防止法施行規則(平成30年11月30日公布)に関する資料
事業者が提供するソフトウェアで、運転免許証などの写真付き本人確認書類と本人の容貌画像を撮影して送信する方法です。本人確認書類は表面・裏面の画像だけでなく厚みの画像などで真正なものか判断します。
また、これらの写真画像は申込時に撮影されたものだけが有効です。カメラロールに保存してあった画像を使用することはできず、申込時の写真のみとすることでなりすましを防止しています。
【6条1項1号ヘ】ICチップ情報と本人容貌画像の送信
出典元:平成30年改正犯罪収益移転防止法施行規則(平成30年11月30日公布)に関する資料
事業者が提供するソフトウェアで、本人確認書類に含まれるICチップ情報と本人の容貌画像を撮影して送信する方法です。
ICチップ情報は、スマートフォンでは専用のアプリ、ブラウザではカードリーダーを用いて読み取ることになります。
この方法では、なりすましによる偽造は難しいものの、ICチップ情報を取得する機会が多くないため暗証番号を覚えている利用者が少ないという問題点もあります。
【6条1項1号ト(1)】銀行など特定事業者への照会
出典元:平成30年改正犯罪収益移転防止法施行規則(平成30年11月30日公布)に関する資料
事業者が提供するソフトウェアで、写真付き本人確認書類の画像か本人確認書類に含まれるICチップ情報を送信した後、事業者から顧客がすでに利用している銀行やクレジットカード会社などへ本人特定事項を照会する方法です。
また同様に、本人確認書類の画像かICチップ情報の送信を受けて事業者から本人確認口座への小額振り込みによる確認方法もあります。この場合は、さらに顧客よりネットバンキングの取引画像をスクリーンショットして事業者に送信する必要があります。
これらの方法は上記の(ホ)、(へ)に比べ実施例がまだ少ないのですが、APIサービスを行う銀行は徐々に増加している傾向にあります。
【6条1項1号ワ】公的個人認証(電子証明)の送信
出典:金融庁 犯罪収益移転防止法におけるオンラインで完結可能な本人確認方法の概要
マイナンバーカードのICチップに記録された署名用電子証明書と、電子証明書発行時に設定した暗証番号(PIN)を使用して本人確認を完了する手法です。
ワ方法は、利用者自身がマイナンバーカードの発行時に設定したパスワードを用いて行うことで改ざんや不正へのリスク回避にもなり、より安全・安心に配慮した手法であると言えます。
ただし、ICチップ読取できるスマホが必要であること、マイナンバーカードのパスワードを覚えている必要があることなど、利用ハードルがやや高い方法でもあります。
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eKYCという新しい技術を導入するには、確かな実績があるところに依頼したいという方にとって、ネクスウェイ本人確認サービスはベストなeKYCサービスと言えるでしょう。
まとめ
犯罪収益移転防止法は、マネーロンダリングおよびテロ組織への資金供与を規制するために、国際的な基準を元に制定された法律です。2018年の法改正ではeKYC(オンライン上での本人確認手続き)の要件が提示されました。
eKYCが認められたことによって、サービス提供までの時間短縮や郵送での本人確認におけるコストを減らすことが可能になりました。2020年の改正において、郵便を利用する本人確認の要件がさらに厳格化したことから、eKYCの需要は今後さらに高まっていくことが考えられます。
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