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民間事業者向けデジタル本人確認ガイドラインとは?目的や改定のポイントを解説

「民間事業者向けデジタル本人確認ガイドライン」とは、本人確認について法令等で定められていないサービスを提供する事業者の指針となるために策定されたものです。安全で効率的な本人確認手法の導入を支援し、法令遵守やリスク管理のポイントをわかりやすく説明しています。

本記事では、デジタル本人確認ガイドラインの概要や活用シーン、導入のポイントなどを解説します。

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本人確認ガイドラインとは?

「本人確認ガイドライン」とは、正式名称を「民間事業者向けデジタル本人確認ガイドライン」といい、デジタル庁が民間企業と連携して策定した指針です。

ここでは、その概要や対象・目的、策定の経緯などを紹介します。

民間事業者向けのデジタル本人確認に関するガイドライン

本人確認ガイドラインは、「法令等で本人確認について定めのないサービス」を提供する民間事業者を対象として、デジタル庁が中心となって策定した指針です。

本人確認のデジタル化が急速に進むなか、多くの事業者がオンラインで本人確認を完結できる仕組みであるeKYC(electronic Know Your Customer)を導入しています。

本人確認ガイドラインは、各事業者が自社サービスの性質やリスクに応じて、適切な本人確認手法を選択・導入できるようにするための判断材料を提供するものです。

本人確認の基本的な考え方や、リスクに応じた対応の考慮点、具体的な手法の選び方などが盛り込まれており、デジタル本人確認の導入・運用における実践的な参考資料として活用できます。

参考:⺠間事業者向け デジタル本⼈確認ガイドライン

デジタル本人確認ガイドラインの対象・目的

近年、オンラインサービスの普及に伴い、法令等で本人確認が義務づけられていない多様なサービスにおいても、デジタル技術を活用した本人確認(eKYC)が自主的に導入されることが増えています。

こうした「法令等で本人確認について定めのないサービス」を提供する民間事業者には、共通の本人確認ルールが存在せず、拠りどころとなる横断的な指針がないことが現状です。

そのため、本人確認に関する理解を深め、自社サービスに適したデジタル本人確認手法を選定する際の判断材料となることを目的とした、本人確認ガイドラインが策定されました。サービスの特性に応じた適切な本人確認方法を検討・導入するためのガイドブックとして活用されることを想定しています。

デジタル本人確認ガイドライン策定の経緯

本人確認ガイドラインは、もともと2020年に経済産業省が取りまとめた「オンラインサービスにおける身元確認に関する研究会」にて議論されていました。

その後、同省の政策実施機関であるIPA(独立行政法人 情報処理推進機構)傘下の組織「DADC(デジタルアーキテクチャ・デザインセンター)」でのインキュベーションラボを経て、ガイドライン策定に至ったという経緯があります。 最終的には2023年3月20日に公表され、利用が開始されました。

ガイドラインの発表自体は一般社団法人OpenIDファウンデーション・ジャパン(OIDF-J)という民間団体から行われましたが、取り組み自体は行政機関と民間事業者が連携して推進してきた官民協働の成果といえます。

デジタル本人確認ガイドラインの必要性

本人確認は、なりすましや虚偽申告などの不正行為を防ぐ基本的な対策として、これまで主に、法令で義務づけられている金融機関・携帯電話事業者・古物商などによって実施されてきました。

しかし、近年はデジタル技術の進展とともに、ECサイトやフリマアプリ、マッチングサービスなど、法律上の本人確認義務が明確でない分野でも、安全な取引環境の確保を目的に、自主的な本人確認を導入する民間事業者が増加しています。加えて、深刻な人材不足が続くなか、業務の効率化を図る手段として、オンラインで本人確認を完結できるeKYCなどの技術を活用する動きも広がっています。

ただし、こうした「義務ではない本人確認」の導入にあたっては、適切な手法の選定が難しいという課題があります。基準が不明確なために、過剰な確認手続きを設けてユーザーの利便性を損ねてしまったり、逆に対策が不十分でセキュリティ上のリスクを残してしまったりする例もみられます。なかには、判断の難しさから本人確認自体を見送るケースも少なくありません。

このような状況を踏まえ、本人確認の義務が明文化されていないサービス領域においても、一定の方針や設計の参考となる共通の枠組みの必要性が高まり、デジタル本人確認ガイドラインの策定が求められることになりました。

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本人確認ガイドラインの活用シーン

民間事業者が本人確認ガイドラインを主に活用するのは、次の2つのシーンです。

  • 提供サービスに本人確認を導入するタイミング
  • 本人確認に関わる規程等の整備に役立てる

本人確認ガイドラインの活用シーンについて、詳しくみていきましょう。

提供サービスに本人確認を導入するタイミング

本人確認ガイドラインは、民間事業者が自社サービスに本人確認を導入する際に「どのような手法を採用すべきか」を判断するための参考資料として活用されることを想定しています。

「自社に合う手法はどれか」「より安全で簡便な手法はないか」といった疑問に対し、手引きとなるものです。

また、特定の本人確認方法の特徴を確認したり、ガイドラインで紹介されているフレームワークを活用したりすることで、自社サービスに最適なeKYC手法を選定する際に役立ちます。

eKYCの導入についてさらに詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。
eKYC導入前に知っておくべきこととは?まとめて解説

本人確認に関わる規程等の整備に役立てる

本人確認ガイドラインは、保証レベルの考え方や本人確認手法の具体例を提示しており、自社サービスにおける本人確認規程や運用ルールの整備を進める上での指針として活用できます。

たとえば、どの程度の厳格さが求められるかを保証レベルで把握し、それに見合った手法の選定や運用体制の構築を行う際に役立ちます。

ガイドライン全体は量が多いものの、情報は体系的かつ網羅的に整理されており、サービスの種類や導入目的に応じて必要な情報に絞って参照できる構成となっています。そのため、導入初期の検討段階から運用フェーズに至るまで、幅広い場面で効率的に活用できます。

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そもそも本人確認とは

本人確認ガイドラインを正しく理解・活用するためには、その前提となる「本人確認」の目的や意義を把握しておくことが大切です。そうすることで、ガイドラインで示される考え方や手法の意図をより的確に理解できるようになります。

ここでは、本人確認の目的や種類、関わる法令について解説します。

本人確認の目的

本人確認とは、サービスの利用者が本人であることを確認する手続きであり、なりすましや偽造といった不正行為を防止することを目的としています。本人確認の実施により、不正の未然防止だけでなく発生時の対応にもつなげられ、サービスのあらゆる段階でセキュリティを強化できます。

近年の社会環境の変化により、本人確認は単なる法令遵守の手段にとどまりません。オンラインサービスの多様化に伴い、安心・安全を求めるユーザーのニーズに応えることで、自社の信頼性やサービスの価値を向上できるのです。

さらに、人手不足といった社会課題の解決策として、無人店舗などにおける本人確認のニーズが高まっています。

本人確認についてさらに詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。
KYCとは?金融機関のみにとどまらない本人確認の重要性
eKYCとは?オンライン本人確認とKYCの違いや導入するメリットを解説

本人確認は「身元確認」と「当人認証」の2種類

本人確認は「身元確認」と「当人認証」の2つに分類されます。

「身元確認」とは、本人確認書類を用いて申請者の実在性を確かめる手続きです。ここでいう実在性は、申請者が実在するか、申請された情報や属性が正しく本人に紐づいているかなどを指します。

具体的には、提出された本人確認書類の内容に偽造やなりすましがないかを、申告内容と照合して確認します。

一方「当人認証」とは、サービスを利用している人物が、実際に本人であることを確認する手続きです。あらかじめ登録されているパスワードや生体情報と、入力または提示された情報を照合することで、本人が実際に操作しているかどうかを確認します。

代表的な例としては、パスワードや生体認証によるWebサービスのログインや端末のロック解除などがあります。

身元確認と当人認証は、まず身元確認によって登録申請者を「加入者」とし、その後、利用申請者が本当に「加入者」であるかどうかを当人認証で確認するという関係にあります。

本人確認の種類や生体認証についてさらに詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。
本人確認方法の種類ごとのメリット・デメリットは?2種類の本人確認書類を紹介
生体認証とは?特徴や認証の種類・メリット・デメリットなどを解説

本人確認に関わる法令

本人確認のうち、身元確認については、講ずべき具体的な手法まで個別の法令で規定されている場合があります。ただし、これらの手法や対象は一律ではなく、法令ごとの趣旨や目的に応じて異なります。

事業者ごとに定められている法令は以下のとおりです。

  • 犯罪収益移転防止法(犯罪による収益の移転防止に関する法律):金融機関等
  • 携帯電話不正利用防止法(携帯音声通信事業者による契約者等の本人確認等及び携帯音声通信役務の不正な利用の防止に関する法律):携帯電話事業者
  • 古物営業法:古物商
  • 番号法(行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律):個人番号取扱事業者

一方、当人認証については、身元確認のように個別の手法を詳細に定めた規定はみられません。ただし、IDやパスワード入力などによる認証に関する定めを設けている法令は一部に存在します。

法令以外にも、「行政手続におけるオンラインによる本人確認の手法に関するガイドライン」のように、オンラインでの本人確認を行う際の考え方や手法の例を、保証レベルとともに示している指針もあります。

本人確認に関わる法令についてさらに詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。

本人確認義務に関する法律とは|内容や違いを比較して分かりやすく解説
犯罪収益移転防止法とは?概要や本人確認(eKYC)の要件について
【2026年4月改正予定】携帯電話不正利用防止法とは?本人確認要件とeKYC手法3つを解説!

参考:e-GOV法令検索「犯罪による収益の移転防止に関する法律」
参考:e-GOV法令検索「携帯音声通信事業者による契約者等の本人確認等及び携帯音声通信役務の不正な利用の防止に関する法律」
参考:e-GOV法令検索「古物営業法」
参考:e-GOV法令検索「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」

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デジタル本⼈確認を導⼊するときのポイント

民間事業者がデジタル本⼈確認を導⼊する際はいくつかの留意すべきポイントがあり、本人確認ガイドラインには、事業者として留意すべきことが記載されています。

ここでは、本人確認ガイドラインが示すデジタル本⼈確認の導⼊、⼿法の選択時に留意すべきことを解説します。

「⾝元確認」導⼊時に対応する項目は5項目

⾝元確認の導⼊にあたっては、以下の5項目についての対応が必要です。また、それぞれに対して、注意点や導入の際のポイントがあります。

  1. ⾝元確認⼿法の選択・ユーザーエクスペリエンスの設計
  2. システムの改修
  3. ユーザーへの事前周知
  4. システム運⽤・セキュリティ体制の整備
  5. 問い合わせ対応の体制の整備

項目

ポイント・注意点

1.⾝元確認⼿法の選択・ユーザーエクスペリエンスの設計

身元確認を導入すると、一定の顧客離脱が生じる可能性がありますが、複数の確認手段を組み合わせ、スムーズなユーザー体験に設計することで機会損失を抑えられます。

2.システムの改修

⾝元確認の導⼊のためにはシステムの構築・改修が必要ですが、API連携可能な外部サービスの活用で負担を軽減できます。

3.ユーザーへの事前周知

導入にあたってはユーザーへの丁寧な説明が欠かせません。信頼性向上につながるため、離脱防止にも有効です。

4.システム運⽤・セキュリティ体制の整備

個人情報を扱う以上、セキュリティ体制の整備も重要であり、外部委託も視野に入れた運営体制の構築が求められます。

5.問い合わせ対応の体制の整備

⾝元確認を適切に運営するためには、不正防⽌と利用者の利便性それぞれの観点から、⾝元確認を円滑に運営できる問い合わせの体制整備も重要です。

eKYCの導入時には、費用も発生します。導入費用についてさらに詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。
eKYCの導入費用とは?相場から選ぶポイントまで徹底解説

個⼈情報の取扱いについて注意が必要

デジタル本人確認を導入する際は、利用者が個人情報の取扱いに懸念を抱くことになるため、適切な管理が求められます。個人情報は利用目的を明確にし、本人が予測可能な範囲で利用しなければなりません。

取得した個人データには安全管理措置が必要で、不要になった情報は速やかに消去することが必要です。開示・訂正・利用停止などの対応も求められ、委託の有無に関わらず、事業者が監督責任を負うことになります。

個人情報の取扱いについてさらに詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。
個人情報保護法を分かりやすく解説|情報の取り扱い方法や改正内容とは
個人情報の第三者提供について詳しく解説!トラブルを防ぐポイントとは

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簡便さと安全性を両立する中間的な本人確認手法

本人確認ガイドラインでは、身元確認と本人認証の各手法に対して保証レベルが設けられており、これらを組み合わせて本人確認の全体的な信頼性を判断することが求められます。

ガイドラインでは「簡便さ」と「安全」のバランスを取った本人確認手法として「中間的手法」を紹介しています。詳しい内容をみていきましょう。

AIを活⽤したホ⽅式の⾃動化

「中間的手法」として紹介されている方法のひとつは「AIを活⽤したホ⽅式の⾃動化」です。「ホ方式」は、犯罪収益移転防止法に基づく本人確認手段のひとつで、取引時に本人確認書類の画像と利用者の顔画像を取得し、両者が同一人物であることを確認する方法です。

本人確認ガイドラインでは、この「ホ方式」にAIを導入した自動化手法も紹介されています。従来は人の目で行っていた確認作業をAIが担うことで、審査時間の大幅な短縮が可能となり、処理効率の向上が期待されています。

参考:e-GOV法令検索「犯罪による収益の移転防止に関する法律」

身元確認結果の活用

「中間的手法」のふたつめは「身元確認結果の活用」です。携帯電話事業者や銀行などがすでに実施している身元確認の結果(ユーザー情報)を、他のサービスの本人確認に再利用することで、本人確認を簡素化できます。

ユーザーは、日頃利用しているアカウントで本人認証を行うことで、新たに本人確認書類を提示することなく、本人確認を完了できます。

本人確認書類の撮影や情報の手入力といった手間が不要となり、利用者の利便性向上に寄与します。また、事業者側にとっても、確認業務の効率化や不備の削減といった点がメリットです。信頼性の高い確認元の情報を再利用することで、セキュリティを確保しつつ、スムーズな本人確認を実現します。

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本人確認サービスの導入にはネクスウェイ本人確認ソリューションがおすすめ

法令で義務化されていなくともデジタル本人確認ガイドラインに沿った本人確認を実現できるネクスウェイの本人確認ソリューションなら、自社に必要な本人確認手法をスムーズに導入できます。eKYCの導入はもちろん、書類の目視チェック、転送不要郵便の発送・追跡まで、本人確認業務に必要な工程をワンストップで支援します。

各種法令に準拠した手順で業務を進められるため、人手不足などの課題を抱える事業者にもおすすめです。初めて導入する方でも簡単に運用できるプロセスを構築でき、本人確認業務の効率化と顧客対応の品質向上の両立を実現します。

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まとめ

本人確認ガイドラインは、オンラインで本人確認を行う際に、民間事業者が適切な手法を選択・運用するための指針を示すものです。法令による本人確認義務がないサービスにおいて、なりすましや不正利用のリスクに備える目的で活用されます。

ガイドラインでは、本人確認の目的やリスクに応じて適切な確認方法を選ぶための考え方や、保証レベルに応じた手法例が提示されています。これにより、ユーザーの利便性を保ちつつ、セキュリティを確保した本人確認の実施が可能です。

「本人確認サービスの選び方がわからない」「スムーズに導入したい」という方は、ネクスウェイの本人確認ソリューションの活用もおすすめです。ぜひご検討ください。

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