eKYCの市場規模が成長を続けるその理由とは?シェア拡大の背景
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スマホがあればいつでもどこでも本人確認が完了できる「eKYC」は、銀行口座の開設やクレジットカードの発行、シェアリングエコノミーの利用などさまざまなシーンで導入されています。
eKYCの市場規模は2020年から大幅に拡大し、今後もますます成長するとされています。eKYCの市場拡大の背景にあるものや今後の展望について、詳しく解説していきます。
目次[非表示]
- 1.eKYCの市場規模は拡大中
- 2.eKYC市場の拡大状況をデータで解説
- 3.なぜeKYC市場は急拡大しているのか?
- 3.1.犯収法の改正による影響
- 3.2.オンラインサービス増加の影響
- 3.3.キャッシュレス決済サービスにおける不正出金事件の影響
- 3.4.非対面取引の需要アップの影響
- 4.成長を続けるeKYCサービスの種類
- 4.1.1.個人向けeKYCサービス
- 4.2.2.法人向けeKYCサービス
- 4.3.3.当人認証サービス
- 4.4.4.公的個人認証サービス
- 4.5.5.その他のeKYCサービス
- 5.eKYC市場|今後の展望
- 6.まとめ
eKYCの市場規模は拡大中
オンラインでサービスを提供する企業は年々増加しており、その中には銀行や保険会社、不動産会社といったユーザーの本人確認が法的に求められている事業者もあります。
オンライン上でも安全に本人確認ができる方法として「eKYC」が注目され、法整備や本人確認の需要増加などの影響もありeKYCの市場規模は拡大の一途を辿っています。eKYCはどのように普及し、幅広く受け入れられてきたのでしょうか。
まずはeKYCとはどのようなものであるのか、概要から解説いたします。
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eKYCとは
eKYCとは、「electric Know Your Customer」の頭文字をとった略語で、その名の通り電子的にKYC(本人確認)を行うテクノロジーを指します。
確認方法にはいくつか種類がありますが、よく知られた方法として、スマホを通じて、ユーザーが自身の容貌や本人確認書類を撮影し、その内容を突合確認することで本人確認を完了する方法などがあります。
ユーザーにとっては、申込みからサービス利用開始までが最短即日で可能という利便性の高さが大きなメリットとなり、ユーザー満足度の向上も期待できます。結果的に、企業側にとってもユーザーの離脱・新規顧客獲得の機会損失を防ぐことができるというメリットにつながります。
eKYCの仕組み
eKYCは、主に以下のような流れで行われます。
- ユーザーがeKYC用のアプリやWebページにアクセスし、住所や氏名といった申し込みに必要な情報を入力する
- ユーザーが容貌や本人確認書類の撮影をリアルタイムで行い送信する
- サービスを提供する事業者、またはeKYCベンダーが写真と本人確認書類、申込み情報の突合確認を目視で行う
- 本人確認が完了し、ユーザーはサービスを利用開始できる
従来の、店舗での対面や郵送による本人確認と比較すると、非常に手軽にかつ素早く本人確認が完了します。もちろん、撮影された容貌や本人確認書類の写真は、高度な画像認証技術によって照合するなど、不正対策を実施しています。
上記で説明した方法以外にも、マイナンバーカードのICチップを読み取るといったさらにセキュリティ精度の高いeKYCも可能です。求めるセキュリティレベルによって、eKYCの方法を選ぶことができます。
法的な要件をクリアしているeKYCの手法5選についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
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eKYC市場の拡大状況をデータで解説
国内eKYCの拡大状況を、実際のデータでご紹介します。株式会社矢野経済研究所が発表した調査結果によると、2020年度のeKYC市場は40億8,300万円、前年度比で270.0%と急成長していることがわかります。
同社では、国内eKYC市場規模は今後もますますの拡大が見込まれ、2024年度には63億円に達するという見解を述べています。(参考:株式会社矢野経済研究所_eKYC市場に関する調査)
なぜeKYC市場は急拡大しているのか?
2019年から2020年にかけてeKYCの市場規模が急拡大したのは、以下のような要因が考えられます。
- 犯収法の改正による影響
- オンラインサービス増加の影響
- キャッシュレス決済サービスにおける不正出金事件の影響
- 非対面取引の需要アップの影響
それぞれの理由について、詳しく見ていきましょう。
犯収法の改正による影響
犯収法(犯罪収益移転防止法)とは、犯罪組織による資金洗浄・マネーローンダリングやテロ組織への資金供与を防ぐために制定された法律です。犯収法によって、銀行や高額なやりとりが発生するサービスは利用者の本人確認実施が徹底されています。犯収法の本人確認義務が該当する事業者を「特定事業者」といいます。
犯収法は2016年に改正され、公的個人認証サービスを利用してオンライン上で本人確認手続きを行うことが認められました。その後、2018年の法改正によって具体的な本人確認方法と要件が定められ、特定事業者をはじめとしたさまざまな企業でeKYCの導入が本格的に加速したのです。
2019年に技術面の整備が完了し2020年から導入が始まったことが、eKYC市場規模の急拡大につながったことは間違いないでしょう。
オンラインサービス増加の影響
先ほど述べた犯収法の「特定事業者」以外にも、クラウドソーシングや配車サービス、レンタサイクルといったシェアリングエコノミーや、マッチングサービス・アプリでもeKYCの需要は高まりました。これらの事業者が本人確認をeKYCで実施したいと望んだ背景には、オンラインで完結するサービスが増加したことも影響しています。
サービスの申込みをオンラインで行ったのに、本人確認は店舗へ赴いたり、必要書類を郵送したりといった手間がかかるとユーザーが申込みを途中で辞めてしまう「離脱」につながってしまいます。
だからといって、セキュリティ対策が不十分な本人確認を行っていると、書類の改ざんやなりすまし、不正等のリスクがあり、サービス自体の信頼性低下にもつながりかねません。利用者と対面せずに安全なサービスを提供するには、本人確認をeKYCで実施することが効果的なのです。
これらの要因もeKYC市場規模の拡大を後押しし、今後も成長を続けるであろうという予測を裏付けています。
シェアリングエコノミーにおけるeKYCの普及について詳しくはこちらの記事で解説しています。
シェアリングエコノミーのメリット・デメリットについてさらに詳しく知りたい方はこちらの記事もご覧ください。
シェアリングエコノミーのメリット・デメリットとは?
キャッシュレス決済サービスにおける不正出金事件の影響
2020年9月に、株式会社NTTドコモによる電子決済サービス「ドコモ口座」のユーザーの提携銀行の口座から不正な出金が行われるという被害が相次ぎ、全国的なニュースとなりました。この事件の原因として、一部の提携銀行がドコモ口座開設の際に「SMS認証」などの「多要素認証」を実施していなかったという、本人確認の脆弱性が指摘されたのです。
前年に発生したセブンイレブンの電子決済サービス「7Pay」の不正出金事件も記憶に新しく、オンライン本人確認の重要性を多くの方が認識した出来事となりました。
これらの事件が全国的に報道されたことでeKYCに対する関心が高まり、需要の増加につながったと考えられます。
非対面取引の需要アップの影響
2020年という年数で気づいた方もいるかもしれませんが、この年は新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響で、非対面取引への需要が大幅にアップした年でもあります。
銀行の口座開設やクレジットカードの発行なども、非対面・オンラインで完結することが求められました。特に金融関係の企業は特定事業者にあたるため、eKYCによる本人確認の導入が急がれたのです。
今後も、テレワークなどの新しい生活様式は続くと考えられ、新型コロナウイルス感染症の収束後に対面取引に完全に戻ることは考えにくいでしょう。AIの導入など、eKYC側の技術革新も継続されているため、今後もeKYCが本人確認のスタンダードとして定着することも見込まれます。
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成長を続けるeKYCサービスの種類
eKYCは市場規模の拡大とともに、利用者にとってより最適なサービスを提供できるようさまざまな種類に細分化されています。現在のeKYCは主に以下の5つの種類に分けることができます。
- 個人向けeKYCサービス
- 法人向けeKYCサービス
- 当人認証サービス
- 公的個人認証サービス
- その他のeKYCサービス
それぞれの種類について、解説いたします。
1.個人向けeKYCサービス
最も一般的なのが、「個人向けeKYCサービス」です。事業者が、個人のユーザーに対して実施する本人確認のeKYCになります。
eKYCの手法は、冒頭「eKYCの仕組み」でご紹介した流れで行う犯収法の要件「ホ方式」が多く使われています。
2.法人向けeKYCサービス
eKYCを個人ではなく、取引する企業の本人確認に活用するのが「法人向けeKYCサービス」です。反社チェックや、法人および担当者の存在確認、住所確認といった業務をサポートします。
1.で紹介した個人向けeKYCサービスでは個人のことを「自然人」と呼称するのに対し、法人向けeKYCサービスは「法人・人格のない社団又は財団」といった形で区別されます。
法人向けのeKYCについてはこちらの記事で詳しく解説しています。
3.当人認証サービス
当人認証サービスとは、eKYCの技術を用いて「取引をしている相手が本人であることを確認する作業」をサポートするサービスです。
容貌や指紋といった生体的特徴を利用する「生体認証」の他に、携帯電話番号を用いたSMS(ショートメッセージサービス)を通じて当人認証をする「SMS認証」も含まれます。
4.公的個人認証サービス
オンライン上での本人確認に必要な情報を、地方公共団体情報システム機構が提供する「電子証明書」で証明するのが「公的個人認証サービス」です。
簡単に言うと、マイナンバーカードに埋め込まれたICチップ情報をスマホで読み取って送信するだけで、本人確認が完了するタイプのeKYCです。犯収法の要件としては「ワ方式」という名称で定められています。
マイナンバーカードによるeKYCについてはこちらの記事で詳しく解説しています。
5.その他のeKYCサービス
その他には、その他には、eKYC後の本人確認作業を代行するサービスや、eKYCによる本人確認ができなかった場合に転送不要郵便の発送に切り替えるサービスなどがあります。
eKYCベンダーによっては、eKYCだけではなく付随するサービスも充実しており、事業者のKYC業務をまとめてアウトソーシングできる体制となっているところもあります。
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eKYC市場|今後の展望
eKYCの今後の展望として、株式会社矢野経済研究所では「eKYC市場規模は、2024年度には63億円に達する」と予測しています。
犯収法の特定事業者のeKYC導入が今後も増える見込みであることに加えて、マッチングアプリや民泊サービスといった法的な本人確認義務がない事業者のeKYC導入が近年のトレンドとして増加していることを理由として挙げています。
CtoCビジネスにおける安全性の向上や、コミュニティ内での信頼性の向上のためにeKYCの本人確認が役立っているのです。
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まとめ
eKYCは犯収法の改正によって本格的に稼働が始まってから、瞬く間に普及してきました。その勢いは、今回ご紹介した市場規模の推移によっておわかりいただけたでしょう。
eKYCによる本人確認が法的に義務付けられていない事業者でも、サービスの安全性やユーザー満足度向上のためにeKYCを導入する流れが起こっていることから、今後もますますの市場規模の拡大が期待されます。
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